Debianに対する日経Linuxの扱いがヒドいと思ったので書き出してみた

nogajun
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本屋に寄ると日経Linux 2009年9月号が出ていたので立ち読みしていたのですが、 「ディストリビューション・ウォッチ」というディストリ紹介記事(p.157-p.159)でのDebianの紹介記事に間違いが多く、ヒドかったので書き出してみます。 たった3ページの記事なのに、これだけあるってちょっと多すぎじゃない?

p.158 1段目 上から9行目

UbuntuやFedoraと異なり、Debianのインストーラには既存のパーティションを縮小してインストールする機能はありません。

あります 。 インストーラの中でパーティションをリサイズすることは可能です。

方法は、インストーラの「ディスクのパーティショニング」の設定で、「パーティションニングの方法」に「手動」を選択します。

次にリサイズしたいパーティションを選択すると「パーティション設定」のメニューに、「パーティションのリサイズ (現在 xx GB)」という項目があるので選択し指示に従うとリサイズできます。

どのディストリでも同じですが、リサイズするパーティションには、あらかじめdefragしておいてください。

p.158 2段目 上から8行目

日本語入力環境は、Linuxの定番である多言語入力メソッド「SCIM」と日本語変換エンジン「Anthy」の組み合わせがインストールされます。

日本語変換にはAnthyが使われていますが、標準でインストールされる入力メソッドは UIM uim です。

スクリーンショット「写真3 Debian GNU/Linux 5.0.2のデスクトップ画面」の右下にも、しっかり UIM uim(青いUの字)のアイコンが写っています。

(2009.8.14) uimの表記は小文字ということで訂正

p.158 2段目 「豊富な対応プラットフォーム」

最新のDebianでサポートしているのは、x86、AMD64(またはx86_64)、SPARC、Alpha、PowerPC、ARM、ARM EABI、MIPS、PA-RISC、IA-64、S/390、MC68000であり、なんと12種類になります。

m68kはold stableのetchからサポートは外れています。

p.159 1段目 11行目 「ライブ版Debian」

Debianでも「Live-rw」というラベルを設定したext3フォーマットのUSBメモリを用意すれば、差分データを保存できます。

その方法では 保存できません 。保存するには起動オプションに persistent と指定して起動する必要があります。

いったい、どこにそんな間違った情報が書いていたのでしょうか? そんな情報が書いてあるページは、KOF2008で配布したDebian Liveの追加情報ページ以外心当たりがないのですが。検証もせず、そこだけを見て書いちゃったのでしょうか?

(ちなみにKOF2008で配ったDebian Liveは、標準でpersistentオプション付きなので、上の手順で保存されますよ。)

p.159 1段目 下から4行目 「DVD再生は別途インストールが必要」

Debianには、完全にフリーのソフトウェア(商標を含むロゴも不可)のみを収録するというパッケージ・ポリシーがあります。

「完全にフリーのソフトウェア」とは何を持って「完全にフリー」というのでしょうか? フリーとはお金ですか? 自由ですか? 自由でもGNUの考える「自由」とDebianの考える「自由」は違いますよ。

Debianで配布しているソフトウェアは、Debian Free Sfotware Guideline(DFSG) というDebianが考える自由なソフトウェアの定義に適合したソフトウェアしか配布していませんが、ユーザーの利便性のため、DFSGに適合しない制限のあるソフトウェアのセクション(contrib/non-free)も作ってソフトウェアを配布しています。

ですが、これらのことと、上の文章に続くDVD再生ソフトウェアの配布問題は、まったく別問題です。

DVD再生ソフトウェアを配布しないのは、Debianがライセンスにうるさいから配布しないのではなく、特許の問題があって配布できないのです。 これはubuntuであろうとfedoraであろうとsuseやその他ディストリビューションでも同じです。

こういう、明らかにミスリードを誘う書き方というのはいかがなものでしょうか。

p.159 3段目 「(2) 公開鍵をインストールし、パッケージ情報を更新します」

$ su
# wget http://debian-multimedia.org/gpgkey.pub -O - | apt-key add -
# aptitude update
# apatitude install debian-multimedia-keyring

wgetで鍵をインポートしているのに、なぜdebian-multimedia-keyringパッケージをインストールするのでしょうか。 鍵をインポートするだけならdebian-multimedia-keyringパッケージをインストールするだけでいいのに、同じ事を2回する意味がよく分かりません。

debian-multimediaのサイトでも親切に書いてあるのだから、ちゃんと読みましょうね。

The first package to install is debian-multimedia-keyring.

First download the debian-multimedia-keyring package.

Then under root or with sudo do the following :

"dpkg -i debian-multimedia-keyring_2008.10.16_all.deb" or "sudo dpkg -i debian-multimedia-keyring_2008.10.16_all.deb"

And voila.

p.159 下部 図

サポート期間: 未定

未定ではありません。次期安定版がリリースされてから1年です。

質問: セキュリティアップデートはどれくらいの期間 提供されますか?

A: セキュリティチームは、 次の安定版がリリースされてから1年後まで 、 安定版をサポートしようと努めます。ただし、次の次の安定版が1年以内に リリースされた場合はその限りではありません。というのは、 同時に2つのディストリビューションをサポートすることでさえかなり難しいので、 3つのディストリビューションをサポートすることは不可能だからです。